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多様なキャリアパスの宝庫! 面白くて奥深い「介護職」の世界 

2025年3月31日
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小学校の教師から29歳で介護職に転職。現場で働きながら様々な資格を取得し、キャリアを積み重ねていく中で、39歳で特別養護老人ホームの施設長になった井口健一郎さん。「介護職は初めに資格がなくても、誰でも働くことができる面白い職業」と語る井口さんに、介護職のキャリア形成や、実際の介護現場の仕事について解説していただきました。

 

教師から介護職へ。現場で実績を積みながら資格を取得

私はもともと東京都の小学校の教師だったのですが、そこから転職して介護の世界に入りました。初めから介護のことを全て知っていたのかと言われれば必ずしもそうではなく、当時親族からは「大丈夫なのか」と心配する声がありました。その後スキルアップしていくにつれてまわりも納得してくれて、今では「いい道を選んだね」と言ってくれるようになりました。

最初は「訪問介護員2級」(今の「介護職員初任者研修」に相当)からスタートし、ショートステイ(短期入所生活介護)に入職して24時間の介護サービスを担当した後、2年目からは特別養護老人ホームに異動。働きながら社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格を取得し、35歳の時より様々なキャリアチェンジをしていく中で、39歳の時に特別養護老人ホームの施設長になりました。今では大学の講師や、ドラマの監修などもさせていただいています。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

誰でもチャレンジでき、多様なキャリア形成が可能

これは厚生労働省が示している介護人材のキャリアモデルです。介護の仕事は裾野が広く、誰でも参画できるというのが特徴で、面白いことに資格がなくても就くことができるものが結構あるのです。大学生・高校生、求職者(他業種からの転職含む)、元気な高齢者、外国人材など、様々な人が介護の現場で働きながら実践を積み、一定の資格を取得することで、国家資格である「介護福祉士」を目指すことができます。介護福祉士になるためには「介護職員初任者研修」や「介護福祉士実務者研修」の取得が必要なので、こうした学びと実績を深めていくことが介護職のキャリアアップに大変役に立ちます。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

また、晴れて介護福祉士に合格したとしても、それで終わりではありません。「サービス提供責任者」などさらに様々な研修を受けながら、スキルアップを重ねていき、最終的には介護リーダーや施設長になったり、認知症ケアや看取りケアなどの特定のスキルを極めたりと、多様なキャリア形成が可能になります。またこれからは地域の中で様々な介護ニーズが増えてくるので、地域住民に向けた教育活動をしていくという道も考えられます。

「介護職」には様々な職種と職場がある

では「介護福祉士」という人たちがどこにいるのかというと、イメージしやすいのはデイサービスやホームヘルプなどの「在宅」系かもしれません。また、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、グループホームなどの「施設」や、病院、介護医療院、介護老人保健施設などの「医療現場」の他、介護福祉士を基礎資格として「ケアマネジャー(※)」という職に就いて活躍している人たちもいます。さらに活動の場は「教育」の分野にも及び、大学や専門学校など介護福祉士を養成する教育機関に勤務したり、家庭介護教室で地域住民のために講師をしたりする人もいます。このように介護福祉士が多岐にわたる場所で活躍する様子を見てみると、「なかなか介護の世界も奥深いなぁ」と思っていただけるのではないでしょうか。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

(※)ケアマネジャーとは

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、介護や支援を必要とする人の相談や心身の状況に応じるとともに、ニーズに応じた介護サービスを受けられるようにするためにケアプランを作成し、各所と連絡調整を行う人のこと。大きく分けて「在宅系」と「施設系」の2種類があり、在宅系のケアマネジャーは基本的には365日24時間、住み慣れた地域の中で、主に自宅を中心としながらケアを受ける体制を作ります。施設ケアマネジャーは、介護職員、介護福祉士とともに、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士など施設の中にいる様々な専門職をコーディネートします。

4段階の「職業能力評価基準」

ここで「在宅介護」について詳しく見て行きましょう。介護職(ケアスタッフ)には、レベル1からレベル4の「職業能力評価基準」というものがあります。レベル1は、軽度の方々のケアを担当することができ、決められた内容の仕事を一通りできるようになるという段階です。レベル2になると一人で仕事ができるようになり、比較的重度の方々のケアができるようになります。レベル3 は極めて困難なケースへの対応や緊急対応が可能で、ケアを提供するだけではなくケアする人たちを組織する「サービス提供責任者」という役割になる人もいます。さらにレベル4になると、エキスパートとして専門性の高い仕事ができるようになるとともに、介護福祉士や介護職員を束ねて組織化するマネージャーになったり、後進を育成する教育者になったりすることができます。また、介護福祉士としての経験が5年以上あれば、職種転換(ジョブチェンジ)をしながら生活相談員やケアマネジャーにチャレンジすることができます。

このように介護職員というのはあくまで入口で、キャリアアップしていくにつれて様々な分野で活躍できるという特徴があります。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

実際の在宅介護の現場での仕事例

こちらは、デイサービスの1日の仕事の流れの例です。始業からお迎え、入浴・お食事のサポート、レクリエーションなど利用者の皆さまが楽しめる活動、ご帰宅のためのお送り等々…。こうして見てみると、それほど難易度は高くなさそうに感じますよね。もちろん、管理者になったりリーダーになったりすると、いろいろな高度な技術が要求されますが、介護職の入口としては馴染んでいきやすい仕事だと言えるのではないかと思います。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

続いて、ホームヘルパーのお仕事についてです。ホームヘルパーの主な仕事は、介護が必要な高齢者の方々の自宅を訪問して、日常生活の援助を行うことです。主に「身体介護」と「生活援助」の2種類があり、身体介護は排泄介助、入浴介助、食事介助、移動介助など、文字通り“身体に触れる介護”を行います。生活援助は、掃除・洗濯、調理、お買い物など、本人の自立支援のために行なっていくサポートになります。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

介護職にチャレンジする人におすすめの研修

これから介護の世界に飛び込もうとする方には、介護に関する基本的な知識や技術を学ぶことができる「入門的研修」がおすすめです。比較的短期間で受講できるため、まさに“入門編”として最適ではないかと思います。また東京都では介護職で働きたい方のために「介護職員初任者研修」や「実務者研修」を開講しています。実務者研修を終了すると、国家試験である介護福祉士を実務経験3年で受けられるので、その後のキャリアアップにもつながっていくと思います。

出典:井口健一郎さん作成の講義資料より

介護福祉士は、いかなる困難な状況にあっても、目の前の生きづらさを抱えている人を最後まで支える専門職でもあります。人のために光を灯す仕事ではありますが、そこで働く自分自身も輝いていく、やりがいのある仕事だと思います。お年寄りが生き生きと元気になっていく、その生活をお手伝いするのが、私たちの仕事なのだと実感しています。

【介護職についてより深く学びたい方におすすめのコンテンツ】

▪️資格習得

東京都 福祉局 介護員養成研修 開講日程の御案内

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/about/soshiki/seifuku/chiiki/oshirase/syoninnsya
*「介護職員初任者研修課程」は、令和7年3月4日から令和7年5月3日までに開講予定(現在募集を終了している研修もあります)

▪️ステップアップしたい人向けの講座

福祉現場とつくるとリーダー育成プログラム 初めてのリーダー 02「福祉現場を

変革するマネジメントの実際」 

https://www.recurrent-navi.metro.tokyo.lg.jp/course/142368

高齢者理学療法学

https://www.recurrent-navi.metro.tokyo.lg.jp/course/2731

▪️介護福祉関連の動画・記事

生活体験をいかせる介護福祉職(動画)

https://www.recurrent-navi.metro.tokyo.lg.jp/movie/132996

介護を通じて得た学び 新田恵利さんの学び直し(動画)

https://www.recurrent-navi.metro.tokyo.lg.jp/movie/127021

【新田恵利さん/タレント】 「学ぶこと」は自分の世界と選択肢を広げること

https://www.recurrent-navi.metro.tokyo.lg.jp/article/128239

 

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