【山崎怜奈さん/タレント・ラジオパーソナリティ】 大人になってからの学びは、とにかく「自由」です
父が見ていた大河ドラマが「歴女」への第一歩
幼い頃から読書が好きな子どもでした。両親、特に父が本をよく読んでいたので、家には本がたくさんありましたし、誕生日やクリスマスに祖父母から贈ってもらった図書カードを持って本屋さんで好きな本を買ったり、学校では図書委員を務めていたので図書館で借りて帰ったりしていました。特に好きだったのが「週刊そーなんだ!」(※現在休刊中)という科学漫画雑誌です。電子レンジでどうして物が温まるのかとか、虹はどうして七色に見えるのかとか、身近な生活の中にある科学を子ども向けにわかりやすく解説している雑誌で、科学以外にも様々なジャンルがあったので、その週で一番気になるテーマのものを買って読んでいました。
歴史に興味を持ったのも、父の影響が大きかったかもしれません。父がNHK大河ドラマをよく見ていたのですが、自分にもある程度知識がついて内容がわかるようになったのが、ちょうど2008年の宮﨑あおいさん主演の「篤姫」でした。女性が主人公で、時代が劇的に動いていくその瞬間に立ち会い、西郷隆盛や大久保利通といった当時の中心人物と関わりを持っていた…。教科書だけでは描ききれない歴史の見方があるのだということを知ってすごく刺激的でしたし、今でも作品を見返すとあの時の自分のキラキラとした好奇心を思い出します。
学校の授業で習う歴史は、受験勉強、いわばテスト対策のために「覚えなきゃならない」ものでした。ただ、中学2年の時の日本史の先生が、語り口がとても独特な方で、応仁の乱だったり、江戸無血開城だったりを、会話劇のような形にして要点を押さえながら教えてくれて、それがとても面白かったんです。今も歴史を学び続けていられるのは、臨場感を持って歴史を教えてくれた、その恩師のおかげなのではないかと思っています。
学校で習う歴史と大人になってから学ぶ歴史の違い
大学では史学専攻ではなかったので、歴史の学びは趣味の範囲でした。例えば松本に旅行に行く時には、松本はどんな土地なのか、松本城の城主は誰だったのか、どの瓦にどういう城主の家紋があるのか、月見櫓があんなにきれいに残っているのは何故なのか…など、事前に本やインターネットで下調べするようにしていました。47都道府県それぞれに様々なグラデーションの歴史があり、その歴史を大事にしている人たちがいて、その人たちが守っている資料館や建造物がある。それらをしっかり見て帰りたいですし、例えば姫路城に登るにしても、お城の構造などの知識があってこそ楽しめることもあるので、そのためにも勉強していてよかったなと思います。
受験勉強で学ぶ歴史と大人になってから学ぶ歴史の違いは、自由度だと思います。学校の教科書は勝者の歴史なので、負けた側の人間のその後や、お取り潰しになった家のその後というのは書かれていないんですよね。学生の時には「あれって結局どうなっちゃったんだろう」と思っても、他に学ばなければならない科目もあるのでそのままにしてしまっていましたが、大人になってからはその場で調べて解決することができるし、好奇心の赴くままに枝葉を伸ばして色々な方面に興味を広げていくこともできます。時間的にも学びの範囲的にも、今はとても自由だと感じてます。
歴史を学んでいて良かったなと思うのは、現代で起きている事象、例えば戦争や災害などがどういうルーツで発生しているのかを理解することができることです。戦争や迫害などを起こす理由として正当化されてはいけないのはもちろんですが、それに至る背景を知っているか知らないかでは、物事の見方が大きく変わります。歴史というと全て過去のことで、今の世の中と全く別のもののように扱われることもありますが、実際にはたくさんの点があって、それが線になって、今の世の中に地続きで繋がっているのだと思うので。「今を知るための過去である」という意識で歴史を学んでいます
いかにフットワーク軽く学べるか
ただ、学び直しで難しいのは、学生の頃は教科書や資料集など、配布されるものをそのまま勉強すればよかったのが、大人になってからはインターネットをはじめ巷に溢れる膨大な情報の中から、正しい情報や本当に必要な知識を、自分で選び取って判断するスキルや力が求められることです
情報も時代とともに変わっていきます。歴史というのは流れであり線であるので、だいたい何年くらいに何があって、その前後を時系列で覚えておけばいいかなって(笑)。勉強したいというモチベーションが続くことが大切なので、いかにフットワーク軽く学べるかということ、元号まで正確に覚えていなかったとしても誰もダメだよって言わないのが、大人の学び直しの良いところだと思います。
歴史以外の学びでも、時代の変化を感じることがあります。今はある程度学校のカリキュラムになっていると伺いましたが、私が学生の頃はお金に関する授業がほとんどないまま社会に放たれたので、いざ社会人になったら「こんなことも知らなかったのか」と。急いで税制や投資など、お金に関することを自分で調べて学び直しました。私は今26歳なのですが、日本の景気が良かった時代を生きてないので、その前の話をほとんど知らないのです。知らないままでいることは、歴史ともうまくリンクしないので、歴史を学びながらお金のことも勉強した経験は、大人になってからの学び直しの中で一番活きたものになったと思います。
仕事のための学びであっても「楽しい」が一番!
ありがたいことに、ラジオパーソナリティや情報・教養番組、そして東京都をはじめとする地域の魅力発信コンテンツなど、様々な仕事をさせていただいているので、仕事のために勉強をしたい時もあります。そういう時は、仕事用のスケジュールアプリで「勉強の時間」を組み込んで、マネージャーさんにも共有した上で学びの時間を確保するようにしています。あとは、移動時間の活用でしょうか。今は新聞紙を広げなくてもアプリで新聞を読める時代なので、ニュースを細かく見ていくことで最新の研究やホットな話題を知ることができます。もちろん紙の良さもあるし、ラジオで詳しい解説をしてくれる番組もあるので、様々なメディアを使いながら隙間時間を活用するようにしています。
でも、ちょっと話が矛盾してしまうのですが、最近はあまり準備しすぎないようにもしています。以前は120%の下準備や勉強をして仕事に臨もうとしていたのですが、そうすると想定外のことが起きた時に身構えてしまったり、インタビューをする方のことを知りすぎるとその場で新鮮な気持ちが薄れてしまったりすることがあるので、敢えて知らない部分を残すというか、余白の中で楽しもう、もっと知ろう、という気持ちを大事にするようにしています。
これから学び始める方にお伝えできることがあるとするなら「とにかく楽しむことが一番!」ということでしょうか。ある程度大人になってくると、新しいことを学んだり、得た知識を活かしたりすることは、良くも悪くもすごく大きな刺激になります。その刺激をマイナスと捉えずに、ポジティブに受け止めて、好奇心を持って楽しめるのであれば、勉強して良かったなと思えるんじゃないかと思いますし、それが大人になってから学ぶ意味、意義につながるのかなと思います。